My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「好きなの? 洋酒」
「別に。それが一番早く酔いが回り易いだけだ」
純粋に気になって更に問えば、ユウは素直に応えてくれえた。
でも…なんだろう、その答え。
酔いたくて飲んでるみたいだけど、楽しんでやってるようには見えない。
…ユウの性格は知ってる。
こんな日に、娯楽に浸るような性格じゃない。
じっとユウの顔を見ていると、その視線が居心地悪いのか、再び目が逸らされる。
だけどやがて諦めに似たような溜息を小さくつくと、再び口を開いた。
「……忘れたいことがある時に、よく飲む。考え事をしたくない時。見たくないもんがある時」
静かな声で告げられたのは、中々自分のことを話そうとしないユウの思いだった。
忘れたいこと。
考えたくないこと。
見たくないもの。
それがなんなのか。
この状況でわからない程、私も鈍くない。
きっとそれは──
「……私…?」
私のことだ。
自意識過剰なんて思わない。
それだけユウにショックを与えたのはわかってる。
恐る恐る問えば、逸らされていた目がやっと合わされた。
頷きも応えもしなかったけど、それだけで充分だった。
そうだって、ユウの目が語ってたから。
「…どうしていいか、わかんなくなったんだよ」
私に会いに来てくれたユウは、最初から真っ直ぐ私を見ていてくれたのに。
今になって、さっきの私みたいに迷う姿を見せてきた。
「お前の……あのノアの姿を見てから」
それはユウらしくない、珍しい姿だった。
「お前の気持ちが見えなくて…雪のことが、わからなくなった。そういう奴じゃないって主張する心があるのに、ずっと俺を欺いていたんじゃないかって疑う心もあって。…何も考えたくなくなった」
「……」
静かな、感情の起伏のない声。
いつもの意志の強い、はっきりとした口調はどこにも見えない。
ユウの、弱い本音のようだった。