My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
私よりも少し低い体温。
触れていると心地良くて、すっぽり包み込んでしまう。
乱暴なことも多いけど、大事な時は酷く優しい。
そんな、ユウの手。
腕を掴む手はいつの間にか放れていた。
両頬を包む、大きな手の感触。
それがユウのものだと実感すると、胸の奥の熱さが増した。
「お前が言葉にするのが下手なことは知ってる。でも今は出せるもんを全部出せ」
優しい力で頬を包まれたまま、顔を持ち上げられる。
再び重なる、吸い込まれそうな真っ黒なユウの瞳。
だけどもうそこに、鋭い眼光は見えなかった。
「ちゃんとぶつけてこい。溜め込んできたもん、残らず全部」
溜め込んできたもの…?
もしかして、この胸の奥の熱さは…それ、なのかな。
「…なんで…そんなに、真っ直ぐ向き合ってくれる、の」
私自身が知らない私のことまで、見て、理解しようとしてくれる。
真っ直ぐ過ぎるユウの目を見返す。
私はノアであることをユウに黙ってた。
騙していたと、裏切られたと思われてもおかしくないのに。
なんでこうも迷いなく、私を見続けてくれるんだろう。
「んなの理由なんて一つだろ」
辿々しく問えば、何言ってんだって、いつもの表情で僅かに片方の眉だけ潜めて。ユウは当たり前のようにそれを口にした。
「俺にとって譲れないもんだからだ」
言葉は咄嗟に何も出てこなかった。
「お前が馬鹿みたいに笑ってるだけで割となんでも許せちまうし、お前が泣きそうな面すると面倒でも放っておけない。それだけ俺にはでかいんだよ。月城雪の存在は」
言葉が詰まって思考も止まって、ただ黙り込んだまま。私とは違う、ユウのすらすらと動く口を見続けることしかできなかった。
「それだけ…お前のことが好きだからだ」
はっきりと告げられた好意の言葉に、胸の奥が強く脈打った。
無口な部類に入るユウは、"好き"というありふれた言葉をあまり口にはしてこなかった。
行動で示すことはよくしてくれても、そういう言葉ではあまり示してくれない。
そんなユウが、はっきりと私に告げた。
愛ある言葉。
「…っ」
じわ、と。何か熱いものが胸の奥から溢れ出した。