My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「こ、来ないでよ…!」
「なんでだよ」
「誰かに見られたらどうすんの…!」
「見られたらなんで駄目なんだよ」
「だって許可もないのに! 勝手に来たことが上の人達にバレたら、ユウの身が──」
「そうやって、」
冷たい石壁に背中が触れる。
それ以上後退れなくて、長い足で簡単に距離を縮めたユウが気付けば目の前にいた。
「他ばっか気にしてっから、そんなふざけた状況になってんだろ」
吐き捨てるように言うユウの顔は、はっきりと歪んでいた。
簡単に触れられる距離。
伸びたユウの手が、感情のままに私の腕を掴んだ。
「なんだよこれ。何をどうしたらたった一日二日で、こんな全身に怪我負うんだ」
怒ってる。
だって、腕を掴む大きな手に力加減なんてない。
火傷を負った肌じゃ強く掴まれただけで悲鳴を上げて、つい歯を食い縛った。
痛い。
…でも、痛くない。
違う、体は痛い。
でも、心が。
感情のない顔で、興味ないとばかりに目を逸らされるよりも。
負の感情でも、私に向けて私を見てくれている。
そのことが、嬉しくて。
…………私、ドMなはずじゃなかったんだけどな。
「何したんだ」
「っ…何、も」
「嘘つけ、ちゃんと言え」
「嘘じゃない…っ」
それでも強く掴んでくるユウの手に、肌の痛みは増す。
歯を食い縛って首を横に振る。
何もしていない。
何も話していない。
何も応えなかったから、こんなことになってしまったんだ。
「何も…してない。室長は、私の為にって…私の未来の為に、全部話して欲しいって、頼んできたけど…私が、応えられなくて…」
罪悪感。それに似た感情は常にあった。
ノアだと知っても尚、歩み寄ろうとしてくれた室長に、応えたくて。
でも応えられない自分の頑固さや我儘に、嫌気が差して。
それでも譲れなかった。