My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
恐る恐る名前を呼ぶ。
呼んでいいのか、わからなかったけど。
神田ユウ
その人の名を。
「……」
返事をしろなんて言ってきたのに、ユウは黙り込んだまま。
不意に何かを取り出す仕草を見せると、暗闇だった部屋の中にぱっと明るい光が灯った。
光の出所は、ユウが起動させた彼専用の通信ゴーレム。
丸いフォルムのそれが、パタパタと宙を舞って一つ目から強い光を漏らす。
赤みを帯びた蝋燭の灯りとは違う、真っ白な光。
つい眩しくて目を細めれば、こっちを向いていたゴーレムの目が逸らされた。
宙を舞いながら、ちょこんと炎の灯っていない燭台の蝋燭に乗る。
電球の代わりにでもなっているつもりなのか、辺りを照らすように小さな目から強い光を辺りに散らした。
「…なんだその幽霊でも見るような顔」
光が灯り、はっきりと見えたお互いの顔。
白い光の中で見えるユウの顔は、やっぱり記憶の中のものと同じだった。
形の良い眉が顰められて、私の顔を見て表情を歪める。
幽霊でも見るようなって…そんな顔してたのかな。
でも無理ないかも。
だって今でも…どこか信じられない。
夢のような錯覚に陥る。
だって…私の願いは、ルベリエ長官によって破棄されたはずなのに。
「…コムイ室長に、聞いた、の…?」
それでもユウが此処にいるのが現実なら、理由は一つだけ。
きっとコムイ室長が私の願いを届けてくれたんだ。
だけどこの場にいるのはユウ一人だけ。
私とユウ二人だけの空間は作れないと、室長は言ってた。
だからこんな状況、あり得ないはずなのに。
…室長は、なんでいないんだろう。
「室長は…? ブックマンと…ラビ、も」
恐る恐る尋ねる。
ユウと話せる機会は欲しいと思ってた。
でも二人だけという空間に、少し、緊張する。
だって…会えないものと思ってたから。
急にこんな展開。何をどう、話せばいいのか。
わからない。
「あいつらはいない。俺一人で来た」
「え…許可、出たの…?」
「……」
まさかそんな許可、室長が出してくれたなんて。
驚いて尋ねれば、ユウは途端に口を閉ざした。
…まさか。