第16章 空の上 海の中
「えぇ?でも……あなたは、船医さんでしょ?」
イリスは控えめに聞いてきたが、その声には疑いの色が混ざっている
疑われて、若干機嫌の悪くなったローはイリスに厳しい目を向ける
ペンギンは後ろでハラハラしている
「いや、オレは船長であり、船医でもある……まぁ、うちの船の奴等は皆、なんらかの医学知識を身につけているから全員が船医みたいなもんだがな」
吐き捨てるように説明したロー
基本的な医学知識は全船員が持っている、しかしローの医術はその中でも飛び抜けているのである
オペオペの実の力もあるが、ロー自身の知識もずば抜けている
加えて、戦闘力が桁違い
だからこその船長兼船医なのである
「全員が?」
ローの言葉を噛みしめるように聞いてから、イリスは感嘆した
イリスの育ったフーシャ村は、ゴア王国からほぼ忘れ去られていたため、医療が満足に受けられなかった
なので、村に一人しかいないお医者さんは村人全員から信頼を寄せられ、その人柄も、利を求めず人の為に尽力する正に医者の鏡だった
そんなお医者さんを見て育ったイリスは《医者=立派な人》という図式が出来上がっていたので、目の前の二人を憧れと、尊敬の眼差しで見つめる
船長か、船医か、なんてのはもう問題ではない………むしろお医者さんである事に感動
「凄いです!お医者さんがそんなにいっぱい!あぁそうだ、船長さん改めてお礼を……本当にありがとうございます!感謝してもしきれません!でも、本当凄いですね~全員がお医者さんだなんて!本当に凄い!」
疑いは、どこへやら………イリスは二人をすっかり信用し、凄いを連発していた
可愛い女の子に褒められて悪い気はしない
いや、それほどでも~と、笑顔で答えるペンギンだが、ハッとして船長の方を見る
ローは無言だが、付き合いの長いペンギンには分かる
わずかに口元が緩んで、ガシガシッと頭をかく仕草、これは………
(船長、嬉しいんッスね)
顔を覗き込んだペンギンは、ローと目が合うと、持っていた刀でバシッと小突かれた