第16章 空の上 海の中
治療の為、医務室に入ると既に船長がいた
しかもマスク、手袋をせず、じっとイリスを見つめている
そんなに彼女の事が気に入ったのだろうか?
それとも医者としての純粋な興味なのか………
ペンギンは声をかけるタイミングを逃し、入口近くで二人を見ていた
このまま船長が気づいてくれるのを待とう、と思っていたのだが、その気配は全く無く、ずっとイリスを見ている
「……うぅ………んっ……エー……ス?」
彼女の意識が戻ったようだ
誰かの名前を呼んでいる
舟の上でも聞いたが、その声は可憐で耳に心地よく、久しく聞いていなかった女の声にペンギンも、ゾクリッと体が震えた
船長もそうだったらしく、握った彼女の腕に力をこめてその体に近づいていく
目の前での行為を止めるべきか、見守るべきか………
ほんの一瞬の間に頭をフル回転させた結果
ペンギンは船長を止めに入った
「マスクと手袋…………忘れてますよ船長……」
一番無難な言葉を選んだつもりだ
それでも船長に睨まれる………
腕に触れた位では大丈夫だろうが、流石にキスまでしたら確実に感染するだろう、そう判断した結果の行動だった
覚悟の上ではあったが、ペンギンの心臓は早鐘のように鳴っていた
悟られまいと、冷静に振る舞う
何も自分は船長の邪魔をしたい訳では無い、イリスの病気が治ればキスでも何でも、いくらでもしてくれてかまわない
ただ、今は我慢して下さい!船長がぶっ倒れるのだけは勘弁して下さい!!
マスクと手袋をローに差し出し、不機嫌な彼の視線を無視してペンギンは医務室での治療を開始した