第48章 欠けた力
異変は、突然起こった。
けれどそれは、モモにしかわからない僅かな異変。
(……なんだか、おかしいな。)
喉になにかが引っかかる。
そっと手を当て、声量を落とした。
(……熱い。)
痛みとは違う、熱いのだ。
ちらりとキラーの様子を窺うけど、病状が和らぐ気配はない。
キッドたちにも、危険が及んでいるようには思えなかった。
(気持ちが…、足りないんだ。)
もっと集中して、気持ちを込めないと。
寄生虫が憎い。
憎い、憎い。
殺したい…。
──ドクン。
喉が、脈打った。
「───ッ」
………熱い!
「どうした?」
思わず歌声を止めてしまったので、キッドとホーキンスが不審に思って声を掛ける。
「…なんでも…ありません。」
喉に違和感があると言えば、ホーキンスが止めるだろう。
モモは咳払いをひとつして、再び唄った。
ドクン、ドクン…。
歌声を響かせることに比例して、喉の熱も高くなっていく。
もしかしてこれは、滅びの歌の影響なのか。
しかし、身体に異変が現れているのに対して、キラーやキッドたちにはなんの変化も起こらない。
しだいに焦りが胸を占める。
(わたしの力が足らないの…!?)
これまでに、歌を唄ってこんな不調を感じたことはない。
けれどモモは、唄い続けることを選ぶ。
せっかく見つけた希望の光。
今この歌の効果で、キラーの命も村人の命も、すべてが決まる。
もっと、もっと、想いを…──。
『モモ、この歌は絶対に唄ってはダメなのよ…。』
(お母…さん…?)
幻覚を見た。
今、そこに。
キラーが横たわるベッドに、亡き母の姿を確かに見た。
無意識に歌を止めた瞬間、喉が燃えるように痛んだ。
「───ッ!」
痛い、熱い……!
ぎゅうっと喉が締まり、息をするのもままならない。
額から汗が吹き出し、崩れるように膝をついた。