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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第48章 欠けた力




「……げほッ、ごほ…ッ」

ひゅっと息を吸ったとたんに、咽せるような咳が出た。

「モモ…! 大丈夫か!?」

すかさずホーキンスが、背中をさすってくれる。

大丈夫…と答えたくても、そのたびに咳が出て言葉にならない。

「落ち着け、ゆっくりでいい。」

呼吸を宥めようとするモモに、水の入ったグラスが差し出される。

「飲め。…心配するな、水は煮沸済みだ。」

キッドからグラスを受け取り、咳の合間になんとか飲み込む。

嚥下すると、喉が灼けるように痛んだ。

滅びの歌が原因であることは、間違いない。

けれど、痛みと引き換えに得られたものは、なにもなかった。

キラーの容態は変わらない。

失敗したのだ。

「やはり、無理がある。そもそも、お前に憎しみや怒りの感情は向いていない。」

諭すように言われ、モモは唇を噛んだ。

そうかもしれない。

もともと、怒りを長く感じ続けられる性格ではないし、両親の仇ですら、モモは見逃してしまった。

歌に込めるべき大切な感情を、本当の意味で知らない自分に、唄えるわけもなかったのだ。

(だけど、諦めたら……。)

待っているのは、死。


ふとキッドを見上げると、彼はキラーをじっと見つめていた。

その瞳には、モモが恐れている決意。

「ま…って……ッ」

咄嗟に袖を掴み、掠れる声で止めた。

よかった、声は出る。

「もう…一度…、唄って…みるから。だから……。」

早まったことをしないで。

ああ、どうして。
こんなに縋っているんだろう。

だって、キッドがそんな瞳をするから。

たぶん、彼はもう…。

「……もう、いい。」

「大丈…夫…ッ、次は…うまく、唄える…から!」

咽せそうになるのを堪え、必死に訴える。

そうしないと、キッドは…。


「なあ、モモ。」

真摯な瞳を向けられ、言葉ごと息が止まった。

「……ありがとよ。」

彼はもう、唄わせてくれない。



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