第48章 欠けた力
キッドとホーキンスはそれでいいかもしれないが、焦ったのはモモの方。
「ちょっと待って…ッ。2人とも、ここはちゃんとわたしの指示に従って。もしかしたら、命を落とすことも あるかもしれないのに!」
滅びの歌を唄うには、患者と2人きりになることが大前提だ。
避けられるリスクをあえて侵す必要はない。
そう訴えているのに、2人ともまるで聞いてくれない。
「だから、なんでお前に従わなきゃいけねぇんだ。俺は俺のしたいようにする。」
「お前が意志を曲げんように、俺の意志も曲がらん。…諦めろ。」
そう言って2人は、床に腰を下ろしてしまう。
絶対に動くつもりはないようだ。
「……。」
彼らをいかにして説得するか悩んだが、途中で「あぁ、ダメなんだな」と悟った。
2人は、モモが侵す禁忌を一緒に背負うつもりなのだ。
モモが覚悟を決めたように、2人も覚悟を決めた。
そんな人間に、危ないから外に出ろと言っても無駄。
「……わかりました。」
不本意ながら、折れる。
ホーキンスがモモの決意を受け取ったように、自分もそうすべきなのだ。
居座る2人を背に、大きく深呼吸をする。
歌に気持ちを込めなければ。
滅びの歌。
それは、憎しみと怒りの歌。
(みんなを苦しめる寄生虫が憎いわ。)
そして、無力な自分が憎い。
助けたい。
助けたい。
かつては、なにかを傷つける歌など唄えないと思った。
大好きな歌は、楽しく幸せなもの。
歌声を負の感情で染めるべきではない。
だけど、救える命があること知った。
だからわたしは、滅ぼすためじゃなく、生きるために唄おう。
そのためには、怒りや憎しみに頼ることも必要なのだ。
大きく息を吸う。
(どうして、滅びの歌は禁忌になったのかしら…。)
頭の端でそんな疑問を思い浮かべながら、モモは旋律を紡ぐ。
初めて唄う、滅びの歌を。