第48章 欠けた力
海賊から商人になったメルディアは、以前にも増して考えが読めなくなった。
これ以上話して、彼女が喜ぶ反応をするのが癪で、ローは自室へ戻ろうとする。
その時、潜水開始を合図するブザーが鳴り、船がガクンと揺らいだ。
ローもメルディアも、バランスを崩して倒れる…なんて醜態は晒さなかったけど、その反動でローのポケットからぽろりとなにかが落ちた。
布に包まれたそれは、メルディアの足下までころころと転がっていく。
ローが気づく前に、それを拾い上げる。
「落ちたわよ。」
手に取った瞬間、形状から指輪であることがわかった。
「……これって。」
思い当たることがあり、しゅるりと布を外すと、予想通りエメラルドグリーンの宝石がきらりと光った。
「オイ、返せ。」
「…なぜ、あなたがこれを?」
礼も言わず手を伸ばしてくるローを軽く睨み、問いただす。
これは、モモの大事な指輪。
彼女がこの指輪を外すところを、見たことがない。
「預かっていただけだ。変な勘ぐりはやめろ。」
口振りからして、彼もこれがどんな指輪なのか理解しているのだろう。
見たところ大きな傷もないので、そのままローに返す。
「まさか、モモが形見として置いていったんじゃないでしょうね?」
彼女が指輪を預ける理由など、簡単に想像できない。
「違う。本当にただの成り行きだ。」
実際、温泉の湯で酸化しないように預かっただけのこと。
「なら…、いいんだけど。」
モモの宝物を案じる気持ちはよくわかる。
だからローも、再び指輪を布に包み、ポケットにしまおうとした。
「待って。その指輪、できれば身につけていた方がいいわ。」
「……は?」
なにを言っているんだ、この女。
明らかに女物の指輪を、身につけろと?
そもそも、モモの指輪は小さすぎて、ローの小指にも嵌まらない。