第48章 欠けた力
「…お前、モモと会っても余計なことを言うなよ。」
「余計なことって?」
わかっているくせに、白々しく問い返すメルディアを黙って睨む。
自分ばかりが嫉妬して、モモにもヤキモチを妬かせてみたい…。
なんて願望はあるけど、彼女が傷つくのはごめんだ。
今のうちに口止めしておきたかったが、残念ながらそれはローの徒労に終わる。
「モモなら知っているわよ。」
「──!?」
不覚にも虚を突かれたような反応をしてしまったローを、メルディアはしてやったりと笑う。
クスクスとした笑い声に正気に戻り、眉間のシワが増えた。
「…どういうことだ。」
シャチやペンギンなら青ざめるようなローの声音も、メルディアには通用しない。
「どうもこうも、親友だもの。隠し事なんてないわ。」
…なんてね。
事実を話すわけにもいかず、適当なことを言ったが、記憶のない彼に疑われるはずもない。
ものすごく複雑そうな表情が、なんとも愉快だった。
「アイツ…、そんなことを知っているようには見えなかったが。」
たぶん、もう忘れているのだ。
しかし、そうとは知らないローは、深読みしすぎてしまう。
(昔の女が、気にならねェのか…。)
傷つかなくてすむのなら好都合のはずなのに、そこはかとなく腹立たしい。
なんて不平等なのだろう。
こっちは昔の男にさんざん苦しめられたというのに…。
もやもやとした様子のローに、メルディアは内心ガッツポーズをとっていた。
これでモモと再会したら、2人にはなにかしら諍いがあるだろう。
(揉めたらいいんだわ。)
嫉妬して、くだらないケンカをしたらいい。
このくらい、些細な仕返しだ。
だって、こっちは死ぬほど心配したんだから。
どうせ、ケンカのあとには砂糖より甘い仲直りが待っているのだろうし。