第48章 欠けた力
行き先がおかしいという件は理解できたが、だからといって船の進路が変わるわけでもない。
ビブルカードが指し示す方向。
そこにモモはいるのだから。
「…麦わらたちに連絡はついたのか。」
ベポの不安を拭い去るため、話を変えようと、散らかったデスクの片隅で眠る電伝虫をつついた。
現在麦わらの一味は、海軍の船から本部行きのエターナルポースを奪うため、別行動をしている。
そもそもその行動は、ローたちがモモのビブルカードを手に入れられなかった時の保険であり、今となってはその必要はない。
ビブルカードとエターナルポース。
このどちらかを手に入れた時点で、互いに連絡を取り合う…というのが約束であった。
「それが、繋がらないんだよ。何度か試しているんだけど。」
「またか。」
ローたちはメルディアを船に乗せ、出航してからすぐに彼らに連絡をしたが、一向に繋がらない。
電伝虫とは、いつでもどこでも繋がるわけではない。
このカタツムリが発信する特殊な電波で通話が可能になるのだ。
だから、距離がありすぎたり、電波が遮られる場所だったりすると、連絡は取り合えない。
潜水中もそれ然りで、電伝虫を使用する時は潜水を中断し、一度海面まで浮上せねばならなかった。
最短最速でモモのもとへ向かうには、なるべく潜水して進みたい。
「繋がらないもんは仕方ねェ。麦わらたちには悪いが、連絡は後回しにする。潜水を開始しろ。」
「アイアイ!」
デッキでクルーたちがバタバタと駆け回る中、ローは自室へ戻ろうと通路を歩く。
よほどの緊急事態でもない限り、ローが力仕事をすることはない。
この船でそんなマネができるのは、船長であるローくらいなものと思われたが、現在はもうひとりいる。
「また潜水するんですってね。」
カツンカツンと音を鳴らし、およそ海賊船にふさわしくないヒールの高い華奢な靴を履いたメルディアが声を掛けてきた。
過去の“関係”を知っている古株の仲間は、彼女に頭が上がらなかった。
そうは言っても、彼女との関係は打算ばかりのもので、恋だの愛だのとはほど遠いところにあったが。
だけどモモと再会した時、彼女がメルディアとの関係を知ったら、やはり傷つくのだろうか。