第1章 好きな人と、体を重ねる人
コンビニ帰りらしかった松山先生は、左手に袋をぶら下げてTシャツにデニムという普段からは想像出来ないラフな格好をしていた。
「あや?」
涙でぐしゃぐしゃの顔をしている私の姿を見て松山先生は驚いた顔をした。
私は目の前に松山先生がいることに驚いたのと、春樹への苛立ちで上手く頭が回らずただ立ち尽くして嗚咽を漏らしていた。
「何かあった?」
常日頃から松山先生の声色は優しい。
薄茶色の暖かい色をした瞳で覗き込まれて、私は両手で顔を覆い感情が決壊してしまったように声をあげて泣き出してしまった。
「とりあえず落ち着くまで家にいなさい。こんな時間に女の子ひとりでそんな風に歩いていたら危ないから」
こんな時間、と言ってもまだ夜の8時も回っていない頃だったが、ぐるぐるした不安定な気持ちのままひとりでいるのも家に帰るのも嫌だった私は首を縦に振る。
松山先生はぽんぽんと私の頭を撫でると、袋を持っていない方の手で私の背中を押して歩き始めた。