第2章 新しい景色達
「渚君結局聞いてたのかな・・・」
彼は怜君のベッドででかでかとご就寝。
私の独り言を逃さなかった怜君は、私に新しい麦茶を注ぐと呆れたように「さぁ」と返した。
視線を隣に座る彼に戻す。
「それにしても今日はありがとう」
「・・・いえ。僕も新たな道の一歩になりました」
メガネを一回くい、とあげて彼は机の上の本に視線を落とした。
「新たな一歩?」
「・・・僕も、あなたと似たような状況にあいましたから。改めて初心に返ったような感じですよ」
彼が片眉を下げて笑った。
初めて怜君のこんな表情を見た気がする。
ああそうか。いつも衝突してたから・・・。どういう風の吹き回しか、彼が私に向けていた針は随分と丸くなったようだった。
そういえば・・・真琴君が何時ぞやに言っていた事を思い出した。
『全く泳げない1年生の男の子がいてー・・・』
「全く泳げなかったって本当?」
「・・・」
彼は遠い目をするような悩ましい表情をした。いけないことを聞いただろうか・・・?プライドの高い彼のことだ。屈辱的な過去なんて思い出したくないかもしれない。
「ごめん。言いたくないならいいんだよ」
「そうではないです。ただ、少々感傷に浸ってしまいました」
「それで、七瀬君の助言で変わったって言うのも・・・」
「助言?・・・あー・・・あれも助言に入るならその通りですけどね」
一体何を言われたのだろう。それを問うと彼は悩んでしまった。
「何と言われたか・・・ですか。・・・言葉とか理知では、少し表しにくいと言いますかー・・・うんーん、本人にお聞きしてください」
「・・・」
「?どうしました」
「いや、なんか私に対して急に角が丸くなったなぁと」
嬉しくてついつい口端がにやける。
それを見られぬよう必死で手で覆い隠した。
思えば、七瀬君に真実を告げられてから元気が出たのはある意味怜君とバイト先でぎゃんぎゃんやっていたからかもしれない。
つんけんしているばかりではない隙だらけで単純な彼に突然愛らしさを感じたのだった。
彼はハッとなったような顔をして頬を少々赤らめる。