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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第45章 前方互換アノード


ぐいと腕を引っ張られ、体が勝手に走り出していた。

ヨンスだ。その顔は努めて無感情になろうとしているが、口許はきつく結ばれている。

その顔を見ただけで、私もぎゅっと口をつぐんだ。

ヨンスの方が、どれだけつらいか。

苦しくなる呼吸の中に、鉄の匂いが混じる。

それはすぐ隣の、ヨンスから匂い立つものだ。

まさか――

「っ!」

「ヨンス!」

ドンッ、とヨンスが前に転がる。

その足には、黒い手がまとわりついていた。

ヨンスは起き上がろうとするが、足を引っ張られ、そのたびに体勢を崩している。

「このっ、このっ!」

靄を追い払おうとするが、一瞬風に撫でられて薄くなるだけで、むしろだんだん濃くなっていくようにも見える。

黒い人影が、ゆっくり、わらわらと集まってきていた。

まずい、落ち着け。

エドと同じように“接続”している私にならできるはずだ。

エドと同じように、靄を追い払うものを生成する。

それか、ヨンスを軽々運べるものを――

「公子さんっ!」





ざしゅ、と。

そんな音がして。

目の前に、香くんの斬撃をマトモに食らったエドがいた。

右肩から腹にかけて、香くんの刃が刺さっている。

ぱき、とディスプレイが割れるような音。

それから、ぱらぱらと、青白い文字列が傷口から地面に落ちていく。

――まるで、血液のように。

「大丈夫、走って」

私とヨンスに顔を向け、エドは微笑した。

それは、「なにも心配はいりませんよ」とでもいうようで、誰かさんを思い出させた。

香くんの温度のない瞳は、焦点も合わずふらふらと中空を漂っている。

でも、空虚な殺意は、確かにその腕を運動させていて、





「――このプログラムは”あなたのもの”ですから」





香くんが、勢いよく刃を引き抜く。

その反動のまま、エドの体躯が地面に叩きつけられた。
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