第5章 本音の吐露は、居酒屋で。
「……あの時はさ、怖かったんだよ」
「怖かった?」
「うん。
高校に行ったら、もう会う理由がなくなるって気づいちゃって。
キョーちゃん、中学の時から誰にでも冷めてたし、
俺が離れたら、一瞬で俺のことなんて忘れる気がしたんだ。
だから、捨てられてもいいから、強引にでも何かを渡して、俺の存在を刻み込みたかった。
……無謀で、ただのガキのあがきだよ」
「……無謀すぎるだろ」
「でもさ、無謀でもなかったのかもね。
なんか言い訳して渡した修学旅行のお土産だったキーホルダー、
まだ持ってたんだよね。
捨てられると思ってたボタンも。
俺、それを知った時、マジで心臓が止まるかと思った」
情けない顔をして笑う俺を見て、修は大きなため息をついた。
「お前さ、その執念深すぎだけど、向こうもやばくないか?
でもまぁ、お前はあれだけ執着してた割には、
大学の時も社会人になってからも、エグいぐらい女遊びしてたよな?
合コンの打率も異常だったし、飲むってなれば絶対女の子ついて来たじゃん。
最近全然来ないって、寂しがってたぞ」
「ああ、もうそういうのはいいよ。めんどくさい」
俺は焼き鳥の串を皿に置き、ビールで喉を潤した。
「めんどくさい、ねぇ。
あんなに『人肌恋しい』って、落ちてた、とか言って
女子をお持ち帰りしてたサイコパスが、随分な様変わりだな」
「サイコパス言うな。
なんていうかさ、外の喧騒がひどく虚しくなったんだよ。
どれだけ色んな奴と飲んで、その場限りの温もりを共有したって、
結局ひとりになった時の虚無感がデカくなるだけで。
でも、キョーちゃんと過ごす時間は違う。ただ隣で本を読んでるだけでいいんだよ」
俺の言葉を聞き終えた修は、
急に思い出したように「ああ、そう言えば!」と声を上げた。