第5章 本音の吐露は、居酒屋で。
週末の金曜、夜の21時。
換気扇の吸気能力が追いついていない焼き鳥屋のカウンター席で、
俺はジョッキの生ビールを煽り、焼きすぎたネギマに手を伸ばした。
隣では、修がすでにホッピーを3杯も空けてご機嫌になっている。
「いやー、それにしても。お前があの『後輩』に飼いならされてるなんてな」
修は未だに数日前の衝撃が抜けないらしく、思い出してはニヤニヤと笑っている。
「キョーちゃんな。
お前、いつまで言ってんだよ。それに、別に俺は飼われてるわけじゃないから」
「どの口が言ってんだよ。あの場で『あ、うん』って言って借りてきた猫みたいになってたのはどこのどいつだ」
「それは、キョーちゃんが正論しか言わないからで……」
言葉に詰まり、俺はポケットからのZIPPOを取り出した。
親指でフリントを弾き、火を灯す。キョーちゃんとお揃いの、世界で一番大切なライター。
紫煙を吐き出す俺を、修はジトっとした目で見つめてきた。
「なぁイツキ。
あの時、俺らは『どうせ捨てられる』ってゲラゲラ笑ってたけどさ。
お前、なんであんなことしたんだ?」
「あんなことって?」
「中学の卒業式の日。
あのちっこい身体で、学ランのボタンを全部。
親指の爪が真っ赤になるまで力づくでむしり取ってさ。
茶封筒に詰め込んで押し付けてたろ。
お前、女子を泣かせるようになった高校以降のイメージが強すぎるから、
すっかり忘れてたけど」
修の言葉に、俺は煙草を持つ指を止めた。
脳裏に、十数年前の、セピア色に褪せた卒業式の光景が蘇る。