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我侭な三角形

第3章 アイツにだけは、教えない。


店員は顔馴染みを見たような顔つきで俺を見た。
店主だろうか。
このカフェのなかで拍車をかけて 紳士 の言葉が似合いそうな初老の男性。

にこりと笑いかけて来たのでそれを返す。
話だが普段どうしてるかは知らないが出来るだけヤツになりきることに集中した。

目についた入口から一番近い手前の席に座る。
暫くすると彼が珈琲をもってやってきた。

「今日はいつもの席ではないのですね」

「たまには別の席に座りたくなりまして」

おー。これハルカっぽい。
と自分の言葉に自画自賛。

「ゆっくりしていって下さいね」

「有り難う御座います」

そう答えたものの俺はこの場から離れることを考えた。
緩やかなクラシック音楽。珈琲の薫り。
暗めの照明は落ち着く。

筈だが、静か過ぎるんだ。
その上ハルカは珈琲をブラックで飲むらしくミルクは持ってきてくれてなかった。

いつもなら店員に頼むのだが今の俺はハルカである。
変な行動をして次回ハルカが来たときにそれを伝えられれば俺の計画が台無しだ。

仕方なく苦いだろう珈琲を口にした。
意外にもあまり苦くなく美味しかったがこれにミルクを淹れたなら最高だっただろうと思う。

だがそこの空気はやっぱり合わないんだ。
カップとソーサーが重なりあう音さえたててはいけない気がした。
気が気ではない。

ここでもまた俺は逃げるように立ち去ったのである。
店主にはなにも言われなかった。
そこまでは踏み込むようなことしないらしい。
きっと次回本物のハルカが此処に来ても今日の事は告げられないだろう。
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