第3章 アイツにだけは、教えない。
俺とアズサは妙な関係であることは分かっている。
付き合ってるわけではない。
かと言って付き合うつもりかと聞かれれば俺の気持ちなんか無視して彼女は声を大にしてNOと答えるだろう。
はじめはほんの少しの悪戯心だけだった。
俺の片割れ、双子の兄貴のハルカ。
今まで女っ気の欠片もなかった。
いや、正確には女に反応するところを一度も見たことがなかった。
俺が可愛いと思う女を見ても、
周りが騒ぐような美人を見ても、あいつはいつも同じ顔をしていた。
もしかして恋愛自体に興味がないのか。
それとも、誰かを欲しいと思う感覚がないのか。
本気で、一生そういうことに縁がない奴なんだと思っていた。
それなのに、妙に色気付いてきたのが1年半前。
ヤツの堅物さは端から見ればさほど変わらなく見えるだろう。
しかしながら俺は生まれてから今までずっと一緒にいたんだ。
この小さな変化に気が付かない筈がなかった。
そこで相手がどんな女か確認してやろうとした。
ハルカが遠方に出掛けた日、俺は事前に用意しておいたヤツの髪型に似たウィッグと普段着ている服、それらを身に纏い街へ出掛けた。
明るく染めた髪をまとめ、その上から黒髪のウィッグ。
意外と自然な感じに馴染んでいた。
鏡の向こうにいた俺は俺でも見間違えそうなほどハルカだった。