第18章 苦難の中の力
沖田「さて、と」
『…』
他愛もない話を続けること約10分――――
あっという間に目的の場所についてしまった。
沖田「んで、話ってなァ何ですかィ?」
屯所の門の柱に寄りかかった総悟は、頭の後ろで腕を組み、横目で私を見た。
流石にここまで来たら逃げられない。
い、言わなきゃ…
『…っ…あの、ね…』
うぁ…
震えて上ずった声が虚しく虚空を漂う。
色々な感情に押しつぶされそうになって声がうまく出せなかった。
どうしよう…
沖田「ったく…」
呆れた様な声が気だるそうに手を差し出した。
沖田「さっきのそれ、貸しな」
『え…』
軽く溜め息をついた総悟は、私の手から小さな箱を受け取ると、徐ろにその包装を開けはじめた。
後で開けろって言ったのは総悟なのに…
沖田「ん」
『え、何…』
箱から取り出された何かを手のひらに乗せて私の目の前に突き出す総悟。
その瞬間
青りんごのような爽やかな甘い香りが、私の鼻をくすぐった。
『いい匂い…何?これ…』
沖田「何だっけ…忘れやした」
『んな阿呆な…』
手のひらに乗せられた小さな白い何かを受け取る。
そこには
"Chamomile〜Apple of the earth〜"
と彫ってあった。
『…アロマキャンドル?』
沖田「ああ、何かそんなんだった気がしまさァ」
もう一度匂いを嗅いでみると、すぅ…っと心が落ち着くのが分かる。
沖田「癇癪を起こした子どもを落ち着けるのに最適って書いてあったんでね。いっつもギャーギャー癇癪起こしてるさくらにはぴったりだろ?」
『誰が子どもか誰が!』
沖田「落ち着きやしたか…?」
『あ…』
言われてみれば、嫌に速く鳴り続けていた心臓も落ち着きを取り戻している。
『…うん。もう大丈夫。ありがとう総悟』
沖田「そうかい」
その時、にわかに一陣の風が起こり、吹き上げられた髪の毛が私の視界を奪った。
『…っ』
沖田「あらら、ぐちゃぐちゃだ」
風で巻き上げられた髪の毛を総悟が手櫛でそっと直してくれる。
さぁ、言わないと。
いつまでも逃げてはいられない。
『あのね…』