第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「ちょ、アンタ!!」
駆け出したウェンドロにミヤが叫ぶ
それはトンファー男が危険だから止めろという意味か、突如駆け出したウェンドロに注意なのか
それが問われる事無く、ウェンドロはトンファー男へ剣を振り下ろした
だが、トンファー男は自身の後ろから来た筈の剣を軽く身体を反らして回避
その後も容赦無く振るわれる剣をいとも簡単に避け続けている
「オイオイ、こんなんなってんだ。俺な訳ないっしょ」
避け続けるトンファー男の口調は何も変わっていない
むしろ余裕そうな彼に部長は溜め息混じりに口を開く
「お前は自分が思っている事が他人に簡単に伝わって、しかも同調してくれるとでも思っているのか?」
「ケッ、しょうがねぇな。だったら一から十まで教えてやるよ」
部長の言に、辟易したとばかりに答えるトンファー男は自身の右腕にあるトンファーでウェンドロの剣を抑える
「良いか、まずその白いのは俺の獲物だ。誰にも渡さねぇ」
そうして語り出したトンファー男の言に、私はやはり目を付けられていたかと改めて実感する
一見言葉の端だけを見ると、まるで色恋沙汰の台詞みたいにも聞こえるが、この場合には明らかにそんな物が当て嵌まらない―当て嵌まったとしても絶対に認めない
「そういう前提があった上でだ、この世界のルールを考えてみろ。この世界で死んだら終わりな奴は二種類、各階のボスとプレイヤーだ。この二種の内、ボスは自分の持ち場から動かないし、今となっては面白い奴かそうじゃないかってのは行かなきゃ分からん。もしソイツが雑魚かつまんねぇ奴ならまさに萎えるって奴だ」
そもこの世界の前に私が前提であるという点に些か不快感を得るが、トンファー男は我関せずと続けている
「じゃあプレイヤー、人間はどうだ。実際会ってみなけりゃ面白いかつまんねぇか分かんねぇが、俺は幸いその白いのっていう面白い奴を知ってる。仮にここで殺したとして、もしアイツが自分にとって一番面白い奴だったらどうする?後は皆、つまんねぇ奴等になっちまうだろうが」
頂点に立てば後は自分より下のみ
それがつまらない―つまる所はこういう所だろう