第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
ウェンドロはトンファー男の隙を伺おうと、トンファー男は欠伸をしていて、互いに動かぬ間が広がる
直後、破壊された壁から巨大な何かが飛んできた
二人の間を通過して、反対の壁にぶつかったそれにトンファー男は何かと目を軽く向けるがウェンドロは視線を外してはいない
ぶつけられた壁の周りに浮かぶ砂煙―徐々に収まって輪郭を顕にする
アレは…魚?
その魚、妙に―いや、確実に見覚えがあった
巨大な姿、長い髭―私がこうなったある意味での原因
クエストボスのギルダークエイクであった
その身体には幾つもの斬られた後のエフェクトがあり、何本もの矢と一本の槍が刺さっている
という事は―
飛んできた方向を見る
そこには人影―その数、六つ
「見付けた、リリィ!!」
オリジナルセブンの面子であった
クエストボスが砕け散るのと同時に部長を始め、私の方へ向かってくる
私も動ければ良かったのだが、それは出来ず皆が来るのを待つほか無かった
「大丈夫…って言うには、ちょっとボロボロだな」
そう言いながら、部長が私の身体を支え立たせる
時間にしてみればほんの少しだというに、この再開に対する安堵が大きい
逆を言うなら、それまでが修羅場だったのだ
「何だ何だ、お仲間か。全く金魚の糞みてぇだな」
トンファー男がこちらを向きながら言う
その表情は相変わらず軽くニヤついている
逆に部長は非常に厳しい目付きをしている―瞳の奥に怒りが見えた気がした
「……お前か?」
部長がゆっくり口調を開く
それと同時にウェンドロがトンファー男へ駆け出した