第18章 卒業式
あの後私は三年一組の教室へ行き、自分が使っていた机に座って、窓の外を眺めていた。
何時間こうしていただろう。
日はいつの間にか沈んでいき、あたりが橙色に染まっていく。
すると、後ろからガラガラとドアが開く音がする。
そして、馴染んだ声が私を読んだ。
蔵馬「やっぱりここにいた」
「……蔵馬」
蔵馬「校門で待ってても中々来ないからね」
「……お昼からずっと待っててくれたの?先に帰ってくれてて良かったのに…」
蔵馬「時音を置いて帰るなんて、出来るわけないだろう。それに、時音とこうして同じ学校から家に帰ることも、もう出来ないんだからね」
「蔵馬」
蔵馬「後、これからの予定も考えないといけないしね」
「……予定?」
予定って何かしら……。
もしかして…デートとかかな?
だって春休みだし、高校の宿題だってもう終わってるし…!!
ヤッタッ…
蔵馬「高校に向けての勉強会の予定」
っ…はい?
高校に向けての…勉強会…?
蔵馬「時音の数学、理科苦手対策をしないといけないからね」
本当に…本当にこの狐は一体どこまで私を馬鹿にしたいの…?
さすがにもう頭きた…!
「もういいわよ!!私高校最初の半年間は秀一と一度も会わない!!」
蔵馬「……え?時音、何言って…」
「ここまで馬鹿にされちゃたまんないわ!!秀一と会わない間に高校の勉強は完璧にする!決めた!
と、言うわけだから秀一。半年会わないってことで」
蔵馬「いや、あの時音。勝手に決められても…」
「勝手に?いま蔵馬だって勝手に私の勉強計画立ててたじゃない!!」
蔵馬「いやでも…、半年はさすがに長すぎなんじゃ…」
「知らないわよ、そんなの。秀一が勝手なことするからでしょ、自業自得よ。
ほら、お母様とおば様待ってるから帰るよ!!」
蔵馬「ちょっ、時音!!」
もう蔵馬なんて知らない!!
見てなさい、絶対驚かせてやるんだからーーー!!
こうして、私と蔵馬の中学校生活は終わった。
結局、次に会うのは半年後という話で収まったけど。
しかし……次に会う時、運命の歯車が回り始めていたことを、私たちはまだ知らない。