• テキストサイズ

約束の行方【御幸一也】長編

第7章 約束の結末


風もない夜空を見上げる

そこにはいつも以上に星が浮かんでいるように見えた。

しかし、
心の中に思い浮かぶのは今日の試合のことだった。

ラストイニングのあの笑顔。

楽しそうだと思ったのも本当。
けれど、それ以上に

……羨ましい。

そう思ってしまった。

その場に一緒にいることのできない自分と
自然と比較してしまった。

「遠くに感じるな……」
気が付いたら、そうこぼれていた。

「何が遠いんだよ」


御幸side

ユキが食堂から出て行ったことにはすぐ気が付いた。

俺は沢村やほかの連中たちが落ち着くのを待って
後を追った。

階段の上で空を見上げている
ユキの背中はいつもより小さく見えた。

「遠くに感じる……」
ふいにそうつぶやいたユキ。

「何が遠いんだよ」

後ろから声をかけると、
ユキは驚いた顔で振り向いた。

「御幸……中にいなくていいの?」

少し動揺したような声で話をそらされた。

「別に。それよりも何が遠いんだよ」

ユキは少し口をつぐみ、うつむいた。

「話したくねぇなら無理には聞かねぇよ」

「でも、共犯なんだろ?俺らは」

その言葉にユキの肩が少し揺れた。

少し間をおいて
ユキはポツリポツリ話し始めた。

「今日の試合のラストイニング」

俺は静かに話を聞いた

「御幸が楽しそうな笑顔をしてたのを見て
昔一緒に練習してた時のこと思い出したの」

ユキは表情を変えずに話を続ける

「すごく懐かしい気持ちになった」

「でもね。それと同時に、昔は同じグラウンドにいたのに……」

「そう思ったら少し寂しくて」

「……今こんなこと思うのもおかしいんだけどね」

ユキはそう言って苦い笑いを浮かべる。

その笑顔に少し考える。

「……さっき、病院でよ」

俺は唐突に話を変えた。

ユキは再び驚い顔をしていた。
けど、黙ったまま話をきいていた。

「応急処置のテーピングなかったら、悪化してただろうって言われたんだよ」

その言葉にユキの瞳が揺れた。

「だから、お前もちゃんと戦ってたよ」

「俺と一緒にキャッチャーズボックスに座って」

「そっか……」

ユキはそう言って静かに涙を流した。

/ 76ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp