第7章 約束の結末
歓声の中、
私は一人息が止まる。
……なんで
「なんで立たないの……」
私のその言葉に横にいた渡辺くんも
ハッと声が止まる。
両膝と腕を立ててる状態から、
中々立ち上がらない御幸。
スタンドから見ててもわかる。
呼吸も浅く、速い。
その違和感はベンチもすぐに感じ取った。
白州くんが御幸に駆け寄る。
次の瞬間――
バン!バン!と地面を叩き
立ち上がった御幸。
その顔には笑顔が浮かんでいた。
「……ほんと、無茶苦茶なんだから」
届かない声で呟く。
御幸はこっちを見て、握った拳を伸ばした。
スタンドはそれに応えるように
「ナイスランだぞ!御幸!!」
「よく走った!!」
口々に御幸を賞賛した。
私はその声に紛れて小声で言った
御幸side
「……バカ」
ユキの口はそう動いた用に見えた。
全身に歓声が響く。
……痛みなんて、もうとっくに分からねぇ。
ベンチに戻り、守備に着く準備をしてると
降谷が来る。
「大丈夫ですか?」
「まぁな」
短く返すと
「良かった」
そう言った降谷。
もしかして俺の心配を――
と少しでも思った自分がバカだった。
「全力で投げられる」
降谷は安心したようにそう言った。
「キャップ!!あいつ、絶対初球やらかしますよ!」
話を聞いていたのか沢村が騒ぐ。
……まじで、コイツら――
面白すぎる。
「降谷」
前を歩く背中に声をかける
「俺をもっと驚かせろ」
そう言って背中を軽く叩く。
「はい」
迷いのないその言葉と一緒に
グラウンドへ出た。
夢主side
ホームベース上で、
両腕を高く広げ笑っている御幸。
ラストイニングらしからぬその笑顔は
私のよく知ってる野球をやり始めた頃の御幸と
全く同じ笑顔だった。
……楽しいんだね。
私もつられて笑顔になる。
御幸はマスクを着けて座る。
ベンチからもスタンドからも飛び交っていた声援が止む。
吸い込まれそうな空気の中、ラストイニングが始まった。
「――ストライク!」
一つ、また一つとアウトが増えていく。
降谷くんも生き生きとしたいい球を投げてる。
けれど、私の目線は御幸から離れない。
マスクの内側でもずっと笑顔。
こんなに楽しそうに野球をやってる御幸を見たのはいつぶりだろう……