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約束の行方【御幸一也】長編

第7章 約束の結末


本当はすぐにでもベンチに走って止めたい。

……「こっちが止めようが相手の気持ちがこっちを向いてなきゃ止まらねぇんだろ」

ふと頭をよぎったのは、あの時の御幸の言葉。

そうだ。

今の御幸は誰にも止められない。

それなら――

「最後まで、ちゃんと見届けてあげる」
小さく呟いて私は打席に立つ御幸を見る。

静まり返る球場。

動く気配のないバット。

フルカウント。

……勝負をするならここ。

ピッチャーがモーションに入る。
その瞬間、御幸の手元が小さく動いた。

次の瞬間

カキン――

乾いた音とともに
打球は高くまっすぐに伸びる。

誰もが見上げる中、確信する。

――入った

バックネットに直撃した打球に
球場のボルテージは一気に最大まで跳ね上がる。

歓声。
どよめき。

その中心でダイヤモンドを回る御幸は、
いつものような不敵な笑みを浮かべていた。

――けれど

……やっぱり、無理してる時の顔。

その笑みの裏にあるものに
気付いてしまったのは私だけだった。

試合終了の合図が響く。

その音を皮切りに私は立ち上がる。

「……っ」

気が付けばもう走り出していた。

ベンチ裏へ――

御幸の元へ。


御幸side

……なんとか乗り切れた。
多分今はまだアドレナリン出てるお陰で動けている。

降谷を部長と病院へ行くように促し、ベンチを出る。
次の瞬間――

「御幸……!」

息を切らして駆けてきたのはユキだった。

……やっぱ来たか

「左の脇腹……」

その一言で空気が変わった。

「……っ!」

一瞬、呼吸が止まった。

「ちょっとこい!」

誤魔化す間もなく、俺はユキの手を引いた。

「ちょ、どこに……!」

「倉持、すまねぇがあと頼むわ」
「お、おう……」

ユキの言葉は無視をして、チームから距離をとった。

今はまだ――人目につく場所じゃまずい。

「ねぇ!御幸!聞いてるの?!」

背中越しに飛んでくる声。
それでも足は止めない。

……今バレるわけにはいかねぇんだよ

「うるせぇ、少し黙ってろ」

自分でも驚くぐらい冷たい声が出た。

そのまま歩き続けた――

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