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約束の行方【御幸一也】長編

第7章 約束の結末


「そんな事、話に来たわけじゃない。ほんとに大丈夫?」
「大丈夫……なわけないじゃん」

力なく笑う。けれどやはり目は笑ってない。

「背負い込みすぎてない……?」

私のその言葉に鳴の肩がビクッと反応した。

「なんのこと?いつも通りだけど?」

そう返しながらも鳴は明確に視線を逸らした。

「絶対違う。音が違ったから」
「……は?」

私の否定に眉を寄せる鳴

「球威のある重さの音じゃなくて、気持ちがノりすぎて重たくなってる音だった」

「鳴らしくない投球」

私がそこまで言うと、鳴の重たい口が開いた。

「知ったような事言うなよ…!」
「知らないよ!実際受けてたの私じゃないし!でも――」

……稲実のキャッチャーの子もきっと分かっていた。

そう言おうとした瞬間、
私の体は鳴の方へ引き寄せられ、
鳴の唇によって私の唇が塞がれた。

ほんの一瞬の事だった。

次の瞬間――

パシンッ!

私の手は鳴の頬を叩いていた。

「バカじゃないの……」

俯いたままの鳴に私は続けた。

「次の試合も、鳴とちゃんと戦いたかっただけのに……」

鼻声になる私の声に鳴はハッとした顔でこちらを見た。

「ご、ごめ……」
「もういい」

鳴から出た言葉を押しのけて私は控え室から出た


鳴side

扉の閉まる音が、やけに大きく響いた。

「……はは」

乾いた笑いが零れた。

ヒリヒリと頬に伝う痛みが、俺を現実に引き戻す。

試合中の焦りや苛立ちが
まとめて自分に返ってきたみたいだった。

「……はぁ」

俯いたまま、大きく息を吐く

雅さんがいなくなって、
――自分が引っ張らないといけない。

その思いが周りも見えなくして、
自分自身を追い込んでいた。

そのうえ、ユキにまで当たった。

……「ちゃんと戦いたかっただけなのに」

そういったユキの声と顔が頭から離れない。

「……ダッサ、俺」

ぽつりとこぼれる。

エースとしても。
人としても。

「このままは……ねぇな」

俺はバックからスマホを取り出した。

少し迷ってから、連絡先を開く。

……面倒だけど

短く打ち込んだメールを送信する。

スマホをバックにしまうと
俺は大きく深呼吸をして、控え室から出た。
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