第12章 11
あの日から、数日。
船の上は、
相変わらず騒がしかった。
前みたいに話せないわけじゃない。
隣に立つこともある。
指先が触れることもある。
時々、
サンジに手を引かれることもあった。
「……来る?」
夜。
低く落ちる声。
煙草の匂い。
熱を思い出すみたいな距離。
でも
「……行かない」
小さく返す
サンジは少しだけ黙って、
それ以上は引っ張らない。
「……そっか」
困ったみたいに笑って、
手を離すだけ。
そのたび、
胸の奥が少し痛くなる。
触れたくないわけじゃない。
ただ
あの夜みたいに、
曖昧なまま流されるのは、
もう嫌だった。
煙草の匂い。
低い声。
触れられた熱。
覚えているはずなのに、
思い出そうとするたび、
どこか上手く繋がらない。