第10章 前日
みかを見送ったあと
サンジはしばらく、その場を動かなかった
煙草を指に挟んだまま、火をつけない。
別に何も特別じゃない夜のはずだった
なのに、いつもみたいに流れない
息だけが、少しだけ浅いまま残る
さっき触れた感覚が、まだ手の中にある
理性だけが、ぎりぎり残っている気がした
それと一緒に、うまく言えないものが残っていた
舌打ちが一つ落ちる
「……らしくねェな」
誰に向けたのかも分からないまま、吐き捨てる
火をつけていない煙草を見て、ようやく息を吐く
「……覚えてねェ、か」
それ以上は、続かない。
そのまま、背を向けた