第8章 買い出し
通りを抜けて、海の見える細い路地に出る。
風が少しだけ変わる
「……ここで最後だな」
いつも通りの声
みかが小さくうなずく
その直後だった。
ぽつ、と落ちる音
頬に一滴
続けて、もう一つ
サンジが空を見る
「……おい」
次の瞬間、雨が一気に降り出す
街の音が変わる。
人の気配が散る。
みかが少しだけ足を止めた
その瞬間、サンジの手が出る
腕を取る、というほど強くない
ただ、引く
「こっち」
雨は相変わらず降り続いている。
屋根の下に落ちる音だけが、やけに近い。
サンジはポケットからタバコを取り出した
カチ、と小さく火をつける
火が灯る
煙が雨の湿った空気に溶けていく
サンジはタバコを指に挟んだまま、しばらく黙っていた
煙がゆっくり上に逃げていく。
隣のみかの髪から、雫が落ちた
サンジの視線がそこに止まる
一瞬だけ
「……髪、濡れてんな」
低い声
言い終わる前に、手が動く
指先がみかの髪に触れる
軽く、確かめるみたいに
そのまま、濡れた髪を少しだけ払う。
サンジの手は離れないまま、止まる。
次の瞬間、指が少しだけ下に滑る
顎のあたりで、ふっと動きが止まる
距離が、そこで一気に詰まった
サンジはそこでようやく息を吐く
「……」