第2章 Lesson1 ただ、撫でるだけ。
「シリウスの夢のスケールって、庶民的だね」
「そうみたいだな」
そう言うハリーも満更ではない顔だった。ハリーもハリーで、すでに“ここでの生活”を受け入れ始めている。レイはその様子を見て、ふと胸の奥が軽くなるのを感じた。
(……あぁ、なるほど)
この空気。マルフォイ家と違って完璧ではなく、少し雑で、でも温かい感じ。そうだ、自分はずっとこれを求めていたんだ。そう悟ったと同時に、不意にドラコの顔が浮かんだ。
「……しまった」
やらかした。間違いなくやらかした。あのまま置いてきたのは、どう考えても失敗だった。
この温もりを知らないドラコに、どうして自分が結婚を渋っているのか理解しろと言っても出来ないだろう。でも――
(……まあ、今度で良いか)
レイはくすっと笑った。悪いことをした自覚はあるが、誤解を解く時間は有り余っている。
2人の距離はこれから縮めて行けば良い事だ。
そういう意味では、ホグワーツでの最後の1年がとても楽しみになってくる。
「なあ、明日は買い物に行かないか?学用品を買わないといけないんだ」
「賛成!でも先に食材買わないと、ここ食べるもの何もないよ!?」
「その前に家具を買おう!冷蔵庫も無いと困るだろう?」
「そうだ!この家って“電気”が通ってるんだよな!!?」
マグル製品愛好家のレイが、瞳をランランと光らせた。
それこそ長年夢に描いてきたマグル製品に囲まれた生活ッ……!!
こればっかりはマルフォイ家では果たせない夢だ。
「よし、じゃあ明日は朝一で買い出しだ!!」
「レイ、早起き出来るの?」
「家電を買うためなら何でもする!!」
意気込んでそう言うと、ハリーとシリウスが笑った。そのままワイワイと話が進んでいく。レイはその中心で、ふと気づいた。
ここではただ好きなことを、好きなだけしていれば良い。この解放感を、どう言葉に表せばいいのだろうか。
「……明日が楽しみだな」
「そうだね!」
「だろう!?」
ぽつりと零れた囁きにさえ、即座に返事が返ってくる。それがなんだかおかしくて、また笑ってしまう。多分明日も騒がしく、多分これからも色々起きるだろう。でも――
(それでも良い……いや、それが良い)
そう思えたことが、レイにとって何より幸せだった。