第3章 色づいて、舞い踊る
「ねぇ駿くん、太刀川さん見なかった?」
「え、見てないよ?」
本部に着いて同じフレーズを口にすることこれで3回目。作戦室を覗いてみても、出水くんと唯我くんに聞いてみても見つからないから、絶対ここだと模擬戦ブースのフロアまで足を運んだのに。
見つけたのは太刀川さんじゃなくて、駿くんだった。片っ端から探してやろうかとも思ったけど、絶対迷子になるからやめた。呼びつけておいて、どこ行っちゃったの。
「ねえねえ花衣ちゃん、今ヒマ?」
「今?んー、ヒマと言えば、ヒマ?かな」
「じゃあさ、ちょっとだけブース入ってくんない?面白いの見つけてさ」
相変わらずのきらきら笑顔。期待するようなそんな目で見つめられたら断れない。
この子は自分のことをよく知ってるんだろうな。どんな顔をしてどんな風に詰め寄れば、欲しい答えがもらえるのかをちゃんと分かってる。それでいて、策はあっても嫌味がないからつい乗せられてしまうんだ。可愛いなぁ。
「わかった、いいよ」
どうせそのつもりだったし、太刀川さんいないしちょうど換装もしてるし。ブースに入る直前、ちらりと見えた駿くんの横顔、それはそれは嬉しそうに口角が上がっていた。
「うわ、なにこれすごい」
「でしょでしょ?ちょー面白いんだよこれ」
「でもなんか、バランス取るの難し、うわぁ!?」
「ははっ、花衣ちゃん大丈夫ー?」
仮想空間、市街地を模した道の真ん中。やり合うでもなく、きゃっきゃと声を出しながら遊ぶ、中学生と大学生の図。他から見れば、アホ二人。だけど当の本人たちは至って真面目だ。
「今めっちゃ跳んだね」
「ちょっと怖かった」
手のひらより少し大きいサイズの、四角い踏み台。
トランポリンみたいな要領のそれを、加減も分からず踏み込めば、すごい勢いで吹っ飛ばされた。
体勢を崩したあたしはそのまま地面にお尻を強打。
腕を引き上げて立たせてくれた駿くんは爆笑。
笑われてるのはあたしなのに、なんでかつられて笑ってしまう。