第3章 色づいて、舞い踊る
「あ、」
「……なんですか」
最後の角を右へ曲がったちょうど同じタイミングで、太刀川さんが何かを思い出したみたいに急に立ち止まるから、なんとなく構えてしまう。
また大事なこと言うの忘れてたとか言ったら、次はどうしてやろうか。じっと見つめられて、彼の両腕が横に伸びた。あたしはと言えば、なにしてるんですか、そんな視線をガンガン飛ばす。
「ほら、こいよ」
「はい?」
「さっき頑張っただろ、戦闘訓練」
「だからなに?」
「だからご褒美の、ハグ?」
「太刀川さん、今日は日曜であれですけど、明日朝イチで病院行って下さいね」
なにやってんのかと思ったら。ご褒美のハグってなんだよ。そんなのいらないから、ご褒美だって言うならこないだ約束した焼肉連れてってよ。
受け止め損ねた太刀川さんは、未だ両手を広げて待ってるけど早々に無視。
ほったらかして歩いてくと、ノリ悪いわー。
じゃあノリでそう言うことできる女の子見つけてそっちでやって下さい。
「なんで緑川はよくて俺はだめなんだよ」
「駿くんはまだ子供でしょ、それにあれは事故みたいなもんです、咄嗟だったし」
真顔で聞いてくるあたり、ホント馬鹿だ。
あたしがそう言うの苦手だって分かっててしてくる挑発も、それを無意識でやってるから困る。馬鹿と天然は最強だなと思った。
「あ、」
「もー、なんですかまたですか?」
「迅からの伝言」
「迅さん?」
いい加減ぶっ飛ばしてやりたい。次から次へとこの男はどれだけ小出しにする気だよ。でも忘れないだけまだマシか。いや、きっと頭に入った半分は、遥か彼方に飛んでってるはず。
頭の中でこの人を散々バカにしたのがいけなかったのか、次に口を開いた太刀川さんの言葉は、今まで放ったそのどれよりも、破壊力が抜群だった。
「今日から1週間でB級あがれってよ」
ぶっ飛ばすどころかぶっ飛ばされた。
1発KO、ノックアウト。