第2章 迷宮のダンジョン
無理だ。ホント無理、まじで無理。なにこれ、こんな事してんの?え、これがここの日常なの?いや、無理だから、絶対ムリだから。ていうかもう帰りたい。無理無理ムリむり。
「花衣ちゃん、はいこれ」
「……ありがとう、ございます」
「あれ、気分悪い?顔青いけど大丈夫?」
「大丈夫です」
嘘だ。全然大丈夫じゃない。昨日の夜、太刀川さんから連絡が入って、今日大学で会う予定を急に入れてきたから、きっとボーダー関連だろうなと思って二つ返事で了承したけど。
その時になぜ聞かなかったんだあたし。そしたらそこで逃げることもできただろうに。
いやムリか。そもそもが全く把握できてないのに、そっち側の言葉を並べ立てられてもちんぷんかんぷんだよ。
大画面に映る、それ、を直視できない視線は、観覧者用に列をなして並べられた1つ前の椅子で静止。いつ終わるの、早く終わってほしい。そんな願いも虚しく既に1時間以上。
そろそろ色々限界だと額の汗を指先で拭ったタイミングで、一緒に見ていた迅さんが席を立った。
次に帰ってきた時には右持っていたペットボトルの水を、もう喋るのもきついあたしに差し出してくれた。
それもこれも、直視できないモニターのおかげ。だってまさかこんな。ランク戦とやらが残虐非道な斬り合いだと思わなかった。
いくら仮の体だとしても見れたもんじゃない。ぶしゃって!ぶちって!あ、無理。音すら無理。何かが斬られた、その何かを想像したあたしの頭のスイッチを、それこそ切ってやりたいよ。
「やっぱだめかー」
「う、ん?だめ?」
「花衣ちゃん、ちょっと着いてきて」
「はい」
独り言にしては大きすぎる声でそう溢した迅さんが2度目に席を立ったから、背中を追ってロビーに出た。
窓際のソファーを指さして、ここ座ってて、言いながら少しだけ窓を透かしてくれる。
空調機の、もわっとした独特な温度が中和され、徐々に冷たい空気に入れ替わるのが今のあたしの体にはかなり有り難かった。