第2章 迷宮のダンジョン
「それもそうだな」
「望月を使い物になるまでに仕上げて、そのお前の言う出会う人物とやらと対峙でもさせる気か?」
「あ、それはない、そこはもう大丈夫。そのもっと先の話しだから」
「先の話し?」
「うん、まだ薄っすらとしか視えてないんだけどさ。かなり強いのとやり合うのが、ね」
「アイツが?」
「そうそう、だから念には念をってこと」
望月が強いのとやり合う。今のアイツからじゃ到底想像なんてできないのは当たり前で仕方ないとして、少なすぎる迅の情報はそれでもコイツからすれば十分喋ったほうか。
つーかそれ、俺がやりたいわ、その強いのと。
室内に響くバリバリとした良い音は迅の口元から。呑気に食ってるってことはそれなりの策があるのか。いや違うか。どれだけ窮地に追い込まれてもこのスタンスは変わらない、コイツはそう言う奴だ。
「で、どれぐらいの期間でどれくらいまで仕上げればいいわけ」
「そうだなー、」
仮入隊でしごいてもらって再来月が入隊式だから、とご丁寧に指まで折ってぶつくさ言ってる迅に向けて出たため息なんて毎回同じ理由だ。
「半年で米屋か秀次と互角、ランク戦で生駒っちから5戦中2本取れるぐらいになったら御の字、かな」
「お前バカだろ、俺よりバカだろ、そんな単純な計算もできないヤツじゃなかったよな?」
「え?だって誰が教えると思ってんの?天下の太刀川さんだよ?できるでしょ」
「お前やっぱマジで嫌い」
「大丈夫だって、俺も手伝うから」
「当たり前だ!」
癪、読めない、横暴、無茶振り、そして乗せるのが異様に上手い。毎回同じ。
「あ、そうだ太刀川さん、近いうちに花衣ちゃんここに呼んでくんないかな、とりあえずランク戦の見学してもらいたいし」
「はいはい了解ですよーっと」
「なんでそんなやる気ない言い方すんの」
誰のせいだと思ってんの。言ったところで飄々と交わすのはサイドエフェクトがなくても分かる。楽しみ半分、腑に落ちないが半分。逃げ回ってコイツの言い分を回避したところで捕まるのがオチ。
だったら最初から白旗振って降参したほうがよっぽどマシだ。
「あ、」
「やっぱもらう」
最後の1枚のぼんち揚を、引ったくるように口の中に入れたのはなけなしの悪あがきだった。