第2章 迷宮のダンジョン
なんだよ誰もいねーのかよ。自分の名前のついた作戦室、背中を伝う汗は冷え切って、端末を何度鳴らしてもうんともすんとも言わなかった出水への腹いせは模擬戦でしてやろうかと思考が喚く。
何キロあるのか定かじゃないダンボールの箱も、生身じゃそろそろ限界だった。国近が持ち込んだ私用のゲーム機を足で払ったテーブルの上へ。スーパーの袋はその横に。平行して設置してある硬めのソファーには自分の体を沈めた。
律儀なんだか単に借りを作りたくないだけか。大量の手土産はきっとどっちの意味も含まれてんだろうなと思うとアイツらしい。
むすっとした表情は照れ隠しで、淡々と紡ぐ言葉にはどこか棘がある。だけどその棘を上手くかわして本音を探ってやると、望月の性分が良く見える。
虚勢と言う名の張りぼてを剥がしたその奥に、繊細で気遣いの出来すぎる女が隠れてると知ったのは随分と前だ。
有り難く受け取った目の前の戦利品に口元が緩んで、持たせてくれたアイツが出した答えには目尻が僅かに下がった。
「太刀川さん」
気の緩みきったところで無遠慮に扉を開けた、今回の一連の主謀者。
望月の言葉を借りるとすれば、胡散臭い笑顔を貼り付けたこの男が、悩みに悩ませた厄介な種だ。
着いて早々に顔を覗かせるタイミングの良さは計算済みで、アイツの決意は予知済みってとこか。向かいのソファーへ同じように腰を下ろした迅が、どことなく上機嫌に見えた。
「太刀川さんの後押しが決定打になったかな」
「俺はなんもしてないけどね」
「いやいや、花衣ちゃんが唯一信頼できる人でしょ。俺1人じゃ敵わなかったよ」
「よく言うわ。手に取るように分かってたんだろ、どうせ」
否定も肯定もしない代わりに、持参したいつもの嗜好品の袋を破いて俺の目の前に差し出す。
揚げたのも食うけど、揚げる前が好きなんだよ。白いまんまを焼くなり茹でるなりするほうが美味いだろ。
首を横に振ると腕を引っ込めた迅が、あ、そういえば、と早速ここへ来た本来の目的にすり替えた。