第4章 感情線の混線
天井へと白く立ち昇る煙りの向こう。箸を持ったまま変な位置で指が止まって、半開きの口元もそのままに、じっと見てくるうちのアホ師匠。見つめ返すこと、ものの数秒。
この顔は呆れ返ってる時に見せる表情だと気づいた。
「なんですか」
「いやお前、どんだけ食うの」
「どんだけでも、です」
「そんな大食らいだったか?」
お肉は別腹なんですよ。それも目一杯体を動かしたあとは。それも首を長くして待ちわびたあとは。
1人で3人分は優に腹に収めてもまだ止まらないあたしを、今度は心なしか引きつった表情で伺う太刀川さんは、汗っかきなグラスの残りのアルコールを全部煽った。
そんな顔する割に、焼けた肉を片っ端からあたしの皿の上へ、まるで山でも作るみたいに盛ってくのは太刀川さん、あなたなんですけどね。
「そういやお前、事務局で手続きしてきたのか?」
「なんのですか?」
「昇格の。確か書類書かされるはずだが」
「………あ、忘れてた。明日やります」
綺麗さっぱり、頭の隅にもなかった。それぐらい今日までの模擬戦が過酷だった、というのは建前で、さっきブースから出てきて開口一番に聞かされた焼肉、の言葉で全てが吹っ飛んだ。
頭ん中とお口ん中がそれ一色で、他なんて見向きもできなかったのが原因だと思う。
「あれ書かないと、任務出れねーから早めにやっとけよ」
「わかりました」
店員にアルコールのおかわりを頼んだ太刀川さんの言葉に思考が反応する。そうだ、防衛任務。これはホントに忘れてた。目先に必死でそこまで考えられなかったってのもあるけど。任務だ、そうだよ任務だよ。