第11章 ホメオティック遺伝子/シリアス
何も意識はしていなくても、何も望んでいなくても、偶然が重なった結果として同じ位置にただいることがある。
一瞬だけ、繭自身も自分で言いながらその“当たり前”がブレているような微かな違和感が走った気がした。
「忙しいのかなー 忙しそうだなー」
「……さあ」
「知らないの?」
「……うん」
まず、そもそも知る必要もないし、知る義務も権利もない。
会おうと思えばすぐ会える関係性でもないし、連絡を取り合うわけでもない、約束をすることもない。
これが事実だ。
ただ、事実を踏まえた上で、今までは特に意識しなくても現実の中で自然に接する機会があった。
それは、偶然、たまたま、ふとした瞬間、こう言えるものだろう。
でも今は、それがない。だから違和感なのかもしれない。
何故か、何か、噛み合わない。繭にすればこんな感覚だった。
「喧嘩でもしちゃったの?避けられてるとか?」
「……いや。それはないよ。されるワケがない」
「……え?実はかなりの愛され自信がある感じ?」
「自意識過剰じゃないって話」
「……ん……?」
首を傾げる友人の反応の方が、普通かもしれないとは思う。
表面で言えば「喧嘩はしない」「避けられることはない」とは、上下関係の上に立ち主導権を握っている側の人間の視点だ。
自信があるから、相手を掌握しているから、心を掴んでいるから、こういう観点が出てくるのは頷ける。
ただ、繭にすれば事実は逆だ。
喧嘩にしても、特定の人間を避けるにしても、“自然ではない動き”を取ること自体がその相手に関して、快か負かの特別感を抱いている何よりの証拠だと思う。
繭が知る所の凛は、繭に対してそんなものは持っていないし良くも悪くもフラットなだけだ。
だからこそ、わからなくなる。理由らしい理由がないなら、少しだけ、奇妙すぎる気がした。
何故か、急に、ここまで見事に重ならなくなるものなのかと思う。
繭が思う所の偶然とは、もう少し雑で適当なものだと思っていたからだ。