第4章 荒神を鎮めん
私を背から降ろすと、黒狐の姿に戻った玄が、咥えていた雷獣の首を地に転がした。赤黒い血が転がった跡を残し、玄の口からポタポタと零れている。
「我が主。首を討って参った。……故に今宵は……」
「ちょっと!……ふふ、ありがとう。やっぱり玄は強いね」
助兵衛狐め……それでも、言葉通り首を持ってきた玄はやはり、格好良い。頭を垂れ目を伏せて待っている玄の頭を撫でた。毛並みに沿って撫でていると、コンコンと鳴きながら私の周りを1周し、2本足で立ち上がって、私の肩に前足を置く。
重さになんとか耐えていると、玄はそれ以上近付くことはせず、雷獣を消滅させた。
「玄御……玄は貴方に求愛しているようだね」
「え……」
「玄、巫女・梓。どうか、みんなを救って欲しい。素盞嗚尊の怒りを鎮めてくれないかな……」
ゆっくり降りてきた志那都比古神が、罰の悪そうな顔をしながら近付いてくる。神に頼まれなくても、元からそのつもりだ。このままだと罪もない者たちが犠牲になってしまう。また妖も現れるかもしれない。
無理やり後ろから足の間に頭を突っ込んできた玄の背に乗り、志那都比古神を見つめる。
「その前にもう1匹、妖怪退治といこう。
梓よ。会をして待っておれ」
言われた通り、矢を弓に掛け、弦を引いたまま精神統一をする。その間に玄はゆっくりと歩き始め、木々の隙間を通り抜けていった。