第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「夜蛾。アレは何だ?」
冷たい独房の中――呪符で呪力を封じられた夜蛾にしわがれた声――京都校の学長である楽巌寺 嘉伸が唸るように問いかけてくる。
彼が指す『アレ』が【突然変異呪骸】であるパンダのことだということは すぐに分かった。
人工的な【呪骸】は他の操術より自立して行動することが可能だ。だが、動力である呪力は術師から与えられたものを消費する。
しかし、パンダの呪力はパンダのもので、自己補完もできている。
「上は今、貴様を特級に認定し、無期限拘束を正式に下そうとしている。貴様がもし アレを意図的に造ったのであれば、容易に軍隊を所持できるわけだからの」
特級――呪術師の最高等級。単独で国家転覆が可能なほどの驚異的な力を持ち、存在自体が呪術界の勢力図を左右してしまえる存在。
現在 認定されているのは、五条 悟を筆頭に、神ノ原 星也、乙骨 憂太、九十九 由基、そして 今は亡き教え子である夏油 傑。
その称号は名誉あるものではなく、呪術界そのものを脅かしかねない存在に与えられる烙印。
楽巌寺の懸念は確かにその通りだ。パンダのように呪力の自己補完を可能とする【呪骸】を造り出すことができるならば、【呪骸】たちは術師の呪力を消費することなく進軍できる――特級の条件を充分 満たせる脅威だ。