第4章 アフレッタンドに駆り立てられる【もう一度〜死滅回游について】
「秤 金次は今、栃木県の立体駐車場跡地にいる」
天元の話では、この賭け試合では術師同士の殴り合いが行われ、秤はその胴元をしながら金を稼いでいるらしい。しかも、客は基本的に非術師とのことだ。
「それ、呪術規定八条の『秘密』は大丈夫なの?」
「いや、おもっ切り抵触してるだろ」
詞織と伏黒が眉を寄せる。二人が不安になるのも無理はない。ここまでの話だけでも、かなり癖が強そうな人物だということは容易に想像できる。説得できるのか。
「賭け試合の参加者には呪詛師もいるだろう。用心していきなさい」
天元の言葉に、虎杖は伏黒や詞織と頷いた。
話は終わり――各々の方針も決まり、それぞれが【死滅回游】の平定に向けて動くべく【薨星宮】の出入口へ足を向ける。
そこへ、九十九が「星也君」と呼んだ。
「好きな女のタイプ……せっかくだし、もう一度 聞かせてもらおうか。前に聞いた『特にない』から変わったかい?」
虎杖の隣を歩いていた星也は足を止め、ゆっくりと振り返る。そして、踵を返した。
「全て終わったら教えます。同じ答えしか返せないかもしれませんが」
そう言って、星也は九十九に手を差し出す。彼女はその手に一度 目を丸くすると、口角を上げて重ねた。
「期待してるよ」
ギュッと手を握り交わした星也が、次に脹相へも同じように差し出す。それをジッと見つめ、脹相も星也と握手をした。
「同じ兄として、もう少し話してみたかったな」
「話せるだろ。全て終われば、いくらでも」
「それもそうだ」
淡々とした声音で脹相が返す。やがて戻ってきた星也が虎杖の先を行き、【薨星宮】を出た。その背中を見送り、虎杖は振り返る。
「脹相! ありがとう、助かった‼︎」
「死ぬなよ」
星也のときとは違い、穏やかな笑みを浮かべる脹相に手を振り、虎杖も【薨星宮】を後にしたのだった。
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虎杖を見送った脹相が、感極まった様子で目元を押さえる。
その様子に「泣いてんの?」と九十九が声をかけるが、「今 話しかけるな」といった様子で、彼はシッシッと手を払った。