夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第14章 天使と巡り会うオラトリオ【東京第2結界】
――みんな、ソレがお母さんじゃないことは分かっていた。
極端に顔の大きな異形――手は六本もあり、いくつも目元のパーツを積み上げた姿。
同じ年頃の少女たちと列に並び、その異形から食事をもらう。
最初は恐ろしかったものの、泣いたり騒いだりした子は、皆 いつの間にかいなくなった。だから、誰も何も言わなくなった。
残飯よりも酷い、釘混じりの泥のようなものでも、食事を与えられるだけマシだと思い込もうとした。
恐怖は次第に麻痺し、この地獄のような環境が当たり前の日常になっていった……そのときだ。
「さ、お仕事の時間だよ〜」
真っ白な髪にサングラスをかけた、背の高い男の人と一緒に、彼は現れた。夜を紡ぎ出したような髪と瞳の、綺麗な顔立ちをした少年。
「真言と式神は禁止ね。せっかく手数が多いんだから、他も伸ばしなよ」
「被害者の保護に使うのは?」
「それならOK」
サングラスの男の人に言われるや否や、少年の背後から巨大な翡翠の鳥が姿を現した。
――その鳥と少年は、この世に これほど美しいものがあるのかと……そう疑うほどだった。
「【太裳】、子どもたちを守れ」
瓦礫だらけの薄汚れた空間で、翡翠色の羽がはためき、身を寄せ合う少女たちを包み込む。
「できれば、耳を塞いでもらえると助かるんですけど」
白髪の青年を振り返って一つため息を吐いた少年は、一歩 前に出ると、懐から紙を三枚 抜いた。放たれた紙が地面に刺さる。
少年に気づいた“母”が勢いよく迫り、その小さな身体に向けて長い腕を振り上げた。しかし“母”の腕は、バチッと見えない壁によって弾かれる。よく見れば、先ほど地面に刺さった札が光を放っていた。
少年は形のいい唇を開く。