夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第12章 トライトーンに蘇る恐怖【東京第1結界】
屋上でドドッと黄櫨の歯が爆発する。爆風から逃れ、黄櫨は煙の奥へ目を凝らした。
「やったか⁉」
「いや! 油断するな! 奴はしぶとい‼」
「なんなんだよ‼」
苛立ち紛れに殴りかかると、髙羽という名の変態芸人の肩に直撃したはずの拳がぬるんっと滑る。
「なんでローション塗れなんだよ!」
「あんかけ かもよ?」
「うるせぇ! 死ね! ……って、マジであんかけ じゃねぇか‼」
「あんかけ、嫌い?」
ほのかに出汁の香りが漂う手を服で拭いながら、黄櫨は戸惑っていた。
マジでなんなんだコイツは。
何度も爆撃した。五回は殺せている手応えがある。
それなのに、頭が軽く焦げている程度のダメージしか食らっていない。
だが、こちらのように【反転術式】を使っている気配はない。
そこへ、ポンッと黄櫨のコガネが現れた。目の部分に×印がつき、くるっと巻いた丸い尾が特徴のコガネだ。
『黄櫨様』
「なんだ?」
『レジィ・スター様がお亡くなりになりました』
思わず目を見開く。
レジィと戦っていたのは、まだ学生のガキだろ。
確かに頭も回るし 戦い慣れていたが、相手は歴戦を潜り抜けた過去の術師だぞ。
黄櫨は深く息を吐き、変態芸人に背を向ける。
「お、どうした?」
「かや子を回収して帰る。やってられるか」
大将を取られたのだ。もうコイツらと戦う理由はない。こちらの負けだ。
かや子の死亡アナウンスはない。まだ生きているだろ。