夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第11章 アディラートに奮い立つ【東京第1結界】
「……呪術師は、嘘吐いてなんぼ……か……【領域展開】、プールによる水責め、犬のカードは失くしたと思わせて伏せておく――やっぱり、総合体育館には逃げ込んだんじゃなく誘ったんだな」
左側頭部の端から肩にかけてを【玉犬】に食われ、もう長くないであろうレジィを伏黒は見下ろす。
「詞織を置いて逃げるなんて二度としねぇよ」
あの六月の少年院のとき、伏黒は言われるままに詞織を置いて逃げた。
そのせいで、詩音は宿儺に目をつけられ、詞織も巻き込まれている。
それに、仮に詞織はいなくとも逃げることはできなかった。
なぜなら、【鵺】は人を乗せて長くは飛べない。前に渋谷Cタワーに虎杖と猪野が上がるため【鵺】を使わせたが、かなり苦労した。
「オマエ、天元様とはどういう関係だ?」
「テンゲン? あぁ、そっか。そりゃ生きてるか、あの引きこもり」
「……そうか。もういい」
これ以上、コイツからとれる情報はなさそうだ。
天元から聞いた【死滅回游】の目的を、レジィは嘘(ブラフ)だと言った。
天元が羂索と裏で繋がっていて、嘘の目的を自分たちに流した可能性も考慮するべきだろうが、この反応ならそれはないだろう。
すると、「コガネ」とレジィが呼んだ。
「コイツに俺の点を全部やれ」
『OK!』
『レジィ・シターから41点が譲渡されました』
伏黒のコガネも現れ、アナウンスをする。
「どういうつもりだ?」
「随分な物言いだな。今際の際の善行だぜ?」
警戒しながら尋ねると、息も絶え絶えになりながら、レジィが小さく身体を揺らして笑った。
「俺はただの野次馬さ。羂索と仲良しこよしじゃない。こうした方が面白くなる予感――ただの勘だ。頼むぜぇ? そんな俺を殺したんだ」
――オマエは運命に翻弄され、道化となって死んでくれよ。
大量の血を流し、レジィの瞳から光が失われる。
『――5点が追加されました』
そんなコガネのアナウンスを聞きながら、伏黒は【玉犬】の頭を撫でた。
「麗美を追え」
命令に応じ、顔を上げて空中の匂いを嗅いだ【玉犬】が走り出す。その背中を、伏黒はふらつきながら追いかけた。