第11章 それぞれの役割
翌日。
私は「15時に原宿集合!」という五条さんからのメッセージを画面に表示させたまま、駅前で途方に暮れていた。
(……原宿の、どこ?)
本当は恵くんと虎杖くんと一緒に来るはずだったのに、私が朝一番で急な任務に駆り出されてしまい、駅に着いたのは今。
辛うじて約束の時間には間に合っているけれど、五条さんの言う「原宿」が具体的にどこを指すのか、私にはさっぱり分からなかった。
───このまま立ち尽くしていても、時間だけが過ぎていく。
意を決して五条さんに連絡しようとしたけれど、結局、指は自然と恵くんの番号を打っていた。
『……もしもし』
ワンコールも鳴り切らないうちに、端末の向こうから聞き慣れた低い声が届く。
それだけで、さっきまで焦っていた心が嘘のように落ち着いていった。
「恵くん、今どこにいるの?」
『竹下通り。…五条さんから聞いてねえのか』
「原宿、とだけ……」
力なく答えると、受話器越しに恵くんの深く、呆れたような溜息が聞こえた。
「…今から六本木に移動するから、お前はそこで待ってろ。拾ってく」
「うん…!ありがとう、恵くん!」
自分でも驚くほど、声が弾んでしまった。
もうすぐ恵くんに会える。その安堵感を噛み締めながら通話を終えた、その瞬間だった。
「ねえ、お姉さん。今一人? これからどっか遊びに行かない?」
そんな言葉と共に、不意に背後から肩を掴まれ、私の身体は小さく強張った。
「あ、…いえ、人を待ってるので……」
ぎこちなく拒絶の笑みを浮かべて身を引こうとしたけれど、男性はさらに口角を歪に上げ、「逃がさない」とでも言うように私の腕を強く引き寄せた。
「いいじゃん、ちょっとだけ。ね?」
「痛っ……!」
乱暴な手の感触に、昨日の恵くんの優しい手つきとの落差が脳裏を過る。
駅前の喧騒が急に遠のき、自分の心臓の音だけが耳元でうるさく打ち鳴らされ始めた。