第80章 主客転倒(しゅかくてんとう)
その笑みは、この男もまた、切り札を秘めていることを意味していた。
ああ・・・コイツは今の『童子』じゃ受け止めきれねえなあ・・・
しゃあねえなあ
「だいだらぼっち」
カダマシは呟いた。瞬間、その首にかけられた赤と紫がうねうねと混じり合うような不思議な色合いで光る勾玉、神宝『生玉』がその輝きを増した。
その光りに包まれ、カダマシの身体がドクンと一度脈動する。ただでさえ大きな体躯が更に膨れ上がっていった。
もちろん、その様子はダリもまた見ていた。身体だけではなく、その内に秘める力もまた体躯に比例して大きくなっていく様子もわかる。
ダリは思った。あの力が、槍に込めた力を上回る前に!
「雷槍よ!」
槍を突き出し、カダマシに向けて極限まで収束した雷撃を打ち出した。ダリの語彙にはないが、それは現代風に表現すれば、超高出力のレーザーに似ていた。
「はーっは!!遅えぇ!」
ダリが術を放った瞬間、カダマシの身体もまた一気に拡張する。
「ありゃ何だぁ!!」
御九里が突如発生した巨大な影に驚き、ダリたちの方を見る。九条は声こそ上げなかったが、同じ気持ちなのか、目を見開いていた。
カダマシの体躯は最終的には体高20メートルほどになっていた。それは例えるならビル6階分に相当する。
ダリの雷撃はカダマシの巨大になった足に命中することになるが、収束させすぎたのが仇になり、彼に致命傷を負わせるには至らなかった。一瞬くるぶしあたりを焦がし、穴を開けることはできたが、神宝が放つ巨大化の力の奔流が作用したのか、それもまた一瞬で癒えてしまった。
「ちっ!」
巨大になったカダマシが身震いするとその衝撃だけで大地が震え、ダリや九条らがよろめく。カダマシは素早くあたりを見回すと、木の下に倒れているクチナワを見出す。生玉の肉体強化の力は視力や聴力などの感覚器官にも作用していた。超感覚を有している今のカダマシには、周囲で起きていることを手に取るように知覚することができていた。
何度使ってもこの力!
素晴らしい!!
大きな体躯、巨人のようなそれで見回す地平は、神の視点そのものだった。脳機能の活性化により、ハイになっているせいか、破壊衝動がいつにも増して抑えにくい。注意していないとこのまま麓に見える町を蹂躙するべく走り出しそうになる。
