第73章 合縁奇縁(あいえんきえん)
私は右手の手のひらを上に向け口元に持ってきて、目を閉じる。左手の人差し指と中指で挟んだ呪符をその手のひらに軽く添えるようにする。呪符には五芒星に『魂』と一文字書かれていた。
『陰陽五行 歳星 死門 奇魂勧請』
符に呪力を流し込むと、符と右手首にはめられた二重の木環が反応し薄く光を放ち、溶け合い、右手の上で混ざり合う。混ざった光は青白く膨らみ、次第にその形を蝶のそれに変貌させていった。ついには、私の右の手のひらの上にアゲハチョウ程度の大きさの青白い燐光を放つ美しい蝶が生まれた。
私の式神、『夜魂蝶』(やこんちょう)だ。
「お願いなのです・・・」
ふっと、息を吹きかけると、2〜3回、軽く羽ばたいた夜魂蝶が私の手のひらから飛び立ち、ひらひらと舞い上がっていった。それは薄い光の水脈を残し、宙空に消えていった。
それを見送ったところで、周囲に嫌な気配を感じた。
チラと見回すと、右手後方に一体、左手にもう一体、そして、右手前方に一体、黒い影のような『辻神』たちが湧いていた。
「敵さんの異界の中、捕まったら強姦必至の鬼ごっこ・・・というわけですか」
力も抑えられている以上、逃げの一手・・・なのです。
これはスリルありますねぇ。
ペロリ、と、私は唇を舐める。
頼みますよ・・・マイ・ヒーロー・・・
助けを待っているのです!
祈りながら、私は、ダッとその場から駆け出した。