第98章 一業所感(いちごうしょかん)
実は、私は、死んでいる間のことで少しだけ覚えていることがあったのだ。
黄泉に落ちそうになった私の腕を二人の人が必死に掴んでくれていた。
ひとりは、メガネを掛けた男性
もうひとりは、ふくよかな女性
そして、その二人の手を補助するように、たくさんの手が私の腕を引いてくれた。
気がついたら私の生命はぐいと身体に引き戻されていたんだ。
そして、身体に生命が重なった瞬間、周囲にまばゆいほどの光が溢れていた。
その光の中で、先程の二人の人が、こちらに向かって頭を下げていた。
本当に一瞬だったから、確かなことは言えないけれども、その唇はニッコリと笑っているように、私には見えたのだ。