第98章 一業所感(いちごうしょかん)
「ダリさん!・・・なんとか、なるかもしれませんよ!」
その声にダリが顔を上げる。
「なんや?九条、なんとかって、どういうことや!?」
見てください!と、九条がハンカチを使って直接触らないように取り上げたのは、麻衣の胸元にあった神宝・死返玉だった。オレンジ色に黒い紋様が蠢いている勾玉の形をしたそれは、九条の手の中で不思議な光を放っていた。
「魂呼びができるかもしれません」
土御門が目を瞠る。当然だ。魂呼びとは、死者蘇生術のことだ。歴史上、成功したという実例は、当の土御門の祖先である『安倍晴明』の記録があるのみである。
「不可能だ」
土御門が言おうとしたことを左前が代弁した。別に彼が特別に非情なわけでは無い。ただ、道理として語っただけだった。
「死者を蘇らせるなんぞ・・・どれだけの呪力量と、繊細なコントロールが必要だと思っとる!いくら神宝があろうとも、無理だ。一歩間違えれば、また黄泉が溢れかえるぞ!」
「普通は不可能です。でも、この場の力、そして、ここにいる人たちの力があれば・・・そう、理論上は可能です!」
九条は力を込めて言った。一瞬、左前と九条との間の空気がピンと張り詰めた。
「・・・聞かせてみい、九条、勝算、あるんやろな?」
沈黙を破るように、土御門が口を開いた。