第95章 絶体絶命(ぜったいぜつめい)
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【絶体絶命】どうすることもできない危険な状況にあること。
ギリギリの戦いよ♡みたいな。
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激しい大地の鳴動が鳴り止む。
私と日暮は思わず頭を抱えるようにしてしゃがみ込んでしまっていたが、静かになったことを受けて、そっと周囲を伺った。
特に、何も・・・破滅的なことは起こっていない?
結界壁を見上げると、先程まで空を真昼のように照らしていた不気味な光は鳴りを潜め、再び夜の帷が周囲を覆っていた。
もしかして、ダリがうまいこと何かをした・・・?
事態がどうやら丸く収まったことを受けて、私がホッとしかけた時、日暮が小さく悲鳴を上げた。
「どうしたの?」
言いながら顧みた彼女の顔色が、予想以上に悪く、そっちの方に私は驚いてしまう。
「・・・綾音さん・・・だ・・・駄目です・・・急いで・・・大鹿島様に知らせなきゃ・・・」
カタカタと身体が震えていた。
青白い顔からなおさら血の気が引いていく。
「た、大変です・・・黄泉平坂が・・・黄泉の入口が、ひ、開き・・・開きました!!」
悲鳴のような日暮の声が、辺りに響き渡った。
その声を受けて、周囲にいた祭部、占部の陰陽師たちが色めき立つ。たちまちのうちにあちこちに伝令が走り、結界を維持している全ての陰陽師達に、そして、東京本庁、京都支所を含めた全ての陰陽寮支所に、その衝撃的な事実が伝わっていった。
黄泉平坂の北方で『玄武盤石厳界』を維持する要として祭壇の前に座して呪言を唱え続けていた大鹿島雪影(おおかしまゆきえ)にも、当然その知らせは届いていた。
「先程の鳴動、この結界内の瘴気の圧の高まり・・・感じてはいましたが、やはり、開いてしまいましたか・・・」
「大鹿島様・・・大丈夫なのでしょうか・・・」
傍らで結界の維持を補助していた祭部の陰陽師・敷島明日香は心配そうな声を上げた。
「明日香・・・私達の為すべきことは同じです。この結界が壊れれば、それこそ日本国中に黄泉の死者、そして魔物達が溢れてしまいます。・・・死守するのです。なんとしても・・・この玄武盤石厳界と水公・歳破反鬼血界を。ここが・・・、私達の立っているこここそが、生と死の境目なのですから。」